アプリ概要
HDS-R採点アプリは、認知症のスクリーニング検査「改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)」の採点を補助するWebアプリです。訪問リハビリや介護施設の現場で、検査の進行・採点・記録までをスマホ1台で完結できます。ブラウザがあればすぐ使え、インストールは不要です。
開発の背景
HDS-Rは、9つの設問で記憶力や見当識(時間や場所の感覚)を確認する、認知症スクリーニングの定番の検査です。30点満点で、20点以下なら認知症の疑い——という分かりやすい指標として、医療・介護の現場で広く使われています。
ただ、実際に検査をやってみると地味に手間がかかります。紙の採点用紙を見ながら設問を読み上げ、回答を聞き取り、配点ルールに沿って点数を計算する。野菜の名前を答えてもらう問題ではストップウォッチで10秒を計り続ける。検査が終わったら、合計点を電卓で出してカルテに書き写す。
一つひとつは小さな作業です。でも訪問先で何件も実施するとなると、この「採点と記録の手間」は無視できません。検査者が紙と電卓に気を取られて、肝心の受検者の表情や様子を見られない。そんな現場の声をきっかけに、このアプリを作りました。
採点ルールや計算といった「機械でもできる部分」はアプリに任せる。検査者は受検者と向き合うことに集中する。それがこのアプリの狙いです。
主な機能
- 1画面1設問のステッパー形式:設問を1問ずつ表示し、回答をタップするだけで次へ進む
- 自動採点:HDS-R特有の配点・打ち切りルールをアプリが処理し、合計点と判定を即座に表示
- 野菜タイマー:Q9(野菜の名前)の10秒計測を内蔵。リセットを繰り返すだけで個数を集計
- 採点用紙の印刷:公式に近いレイアウトで結果を1枚に出力。そのままカルテに使える
- 検査履歴の保存:ログインすれば結果を自動保存。同じ方の再検査が一発入力で済む
1問ずつ進む、シンプルな検査画面
このアプリの中心は、設問を1画面に1問ずつ表示する「ステッパー形式」です。今どの問題を聞いているかが一目で分かり、検査者は画面に縛られず受検者に向き合えます。
特に効くのが、HDS-R特有の「打ち切りルール」の自動処理です。たとえばQ5(100から7を順番に引く)は、1回目の答えが不正解ならその時点で打ち切り——というルールがあります。数字の逆唱を行うQ6も同じです。このアプリは1回目が不正解なら2回目を自動でスキップするので、「ここは打ち切りだったか?」と迷う必要がありません。
記憶問題(Q4)で使う3つの言葉も、系列A(桜・猫・電車)と系列B(梅・犬・自動車)をその場で選べます。前回と同じ系列を避けたいときも、画面上で切り替えるだけです。
ストップウォッチいらずの「野菜タイマー」
Q9は「知っている野菜の名前をできるだけ多く言ってください」という問題です。約10秒待っても次が出なければ打ち切り——というルールで、これを別途ストップウォッチで計るのは案外わずらわしい作業です。
このアプリでは、受検者が野菜を1つ言うたびにボタンを押すと、タイマーが10秒に戻ります。10秒が経過すれば自動で終了。あとは数えた個数がそのまま得点に換算されます(6個で1点、10個以上で満点の5点)。検査者は受検者の発話に集中したまま、片手で個数を記録できます。
検査が終わったら、すぐ印刷
採点が終わると、公式のHDS-R採点用紙に近いレイアウトで結果を印刷できます。氏名・年齢・検査日・検査者名、設問ごとの採点内容、合計点とカットオフ判定(20/21点)までが1枚に収まります。
電卓で合計を出してカルテに転記する作業がなくなり、検査後の事務作業がそのまま1枚の出力に置き換わります。
2回目以降がぐっと楽になる履歴機能
Googleアカウントでログインすると、検査結果が自動で保存されます。同じ方を再検査するときは「履歴から選ぶ」で氏名・生年月日・性別を一発入力。毎回打ち直す手間がありません。
受検者ごとの履歴は時系列で見られ、20点以下のケースには「要注意」マークが付きます。担当する方が増えても、一覧で状態をすぐ把握できます。前回より点数が下がっていないか、といった経過の確認もしやすくなります。
なお、ログインしなくても検査の実施・採点・印刷はそのまま使えます。アカウントを作るのは履歴を残したいときだけで構いません。
使用技術・工夫した点
フロントエンドはNext.js、データの保存にはFirebase(Firestore)を使っています。アプリ自体はブラウザで動くため、専用機器やソフトのインストールは不要です。
工夫したのは、現場での「使いやすさ」です。スマホでもタブレットでも操作できるようにし、生年月日の入力はスクロール式のピッカーにして年齢の目安も一緒に表示。検査の途中でアプリを閉じてしまっても、再開機能で入力内容が消えないようにしています。検査者の名前も一度登録しておけば、次回から自動で入ります。
「検査中に余計な操作で気を取られない」ことを最優先に、ボタンの大きさや画面の遷移を細かく調整しました。
よくある質問
Q. インストールは必要ですか? 不要です。スマホやタブレットのブラウザでURLを開くだけで使えます。
Q. ログインしないと使えませんか? いいえ。検査の実施・採点・印刷はログインなしで使えます。ログインが必要なのは、検査結果を保存して履歴を残したいときだけです。
Q. 検査の途中で中断しても大丈夫ですか? 大丈夫です。再開機能があり、途中まで入力した内容を引き継いで続けられます。
こんな方におすすめ
訪問リハビリや介護施設で、HDS-Rを日常的に実施している方に向いています。紙の採点用紙と電卓での運用に手間を感じている方、検査中もっと受検者の様子に集中したい方は、一度試してみてください。
「自分たちの現場のこの作業も、仕組みにできないか」——そんなご相談も歓迎しています。日々の手作業を、現場に合わせた小さなWebアプリにするお手伝いをしています。同じような課題をお持ちなら、お気軽にお問い合わせください。