業務を効率化したいと思ったとき、多くの人がまず考えるのは「自動化」や「便利なツールの導入」です。でも、実はもっと効くやり方があります。それは、その作業を「そもそもやめる」という選択肢を検討することです。
頑張って自動化したものの、よく考えれば「その作業、別になくても困らなかった」というケースは、意外と多くあります。私自身、お客さまの業務を整理していて、いちばん効率化に効くのが「やめる」という発想だと感じることが何度もありました。
今回は、続けてきた作業の中から「やめていい作業」を見つけるコツを紹介します。引き算で考える効率化の話です。
なぜ「やめる」が見えなくなるのか
毎日の業務には、過去にどこかで必要だった作業が、今もそのまま残り続けていることがよくあります。
ひとつは、「昔は必要だったが、今は意味が薄い」作業。お客さまから紙のFAXが多かった時代の対応フロー、退職した社員のために作っていた日報、もう連絡が来ない取引先用に毎月作っているレポート——状況が変わっても、作業だけが残り続けます。
もうひとつは、「念のため」と「習慣」で続けている作業。「何かあったときのために」「これまでこうしてきたから」という理由で、明確な必要性がないまま続けているもの。誰のための作業か、なぜやっているかを聞かれると、はっきり答えられないことがあります。
そして難しいのは、これらの作業が「目に見えて困ったことを起こしていない」ことです。やめても誰も困らないけれど、続けているから問題が表面化しない。だから、見直すきっかけがないまま、ずっと続いてしまいます。
やめていい作業を見つける3つの問い
では、どうやって見つけるか。私はいつも、次の3つの問いで作業を見直しています。
① これは誰のため?
その作業の結果を、誰が見ているか・誰の役に立っているかを問います。
「自分のため(管理用)」「お客さまのため」「取引先のため」「社内の他の人のため」——誰のためなのかが明確に答えられない作業は、要注意です。「みんなのため」「念のため」と答えてしまうものは、たいてい誰のためでもなかったりします。
② やめたら何が困る?
その作業をやめたら、具体的に何が起きるか・何が困るかを問います。
「お客さまに迷惑がかかる」「他の業務が止まる」「あとから困る」というように、困ることが具体的に出てくるなら、その作業は必要です。逆に、「うーん、何が困るかパッとは出ないな」と詰まる作業は、やめても大丈夫な可能性が高い。
「念のため」と答えそうになったら、もう一段掘ってみるといいです。「念のため、というのは具体的にどんなとき?」と。それでも具体例が出てこないなら、その「念」はもう必要ないかもしれません。
③ いつから、なぜ始めた?
その作業をいつ・なぜ始めたかを思い出してみます。
明確な理由を覚えていれば、その理由が今も当てはまるかを確認できます。逆に「いつの間にか始まっていた」「前任者から引き継いだだけ」というものは、当時の事情がもうないかもしれません。状況が変わっているなら、作業も見直す価値があります。
「やめる」のハードルを下げる、段階的なやり方
とはいえ、「明日からやめます」と急に決めるのは怖いものです。長く続けてきた作業ほど、急にやめることへの抵抗が大きい。そこで、段階的にやめていく方法をおすすめします。
頻度を減らす 毎日やっていた作業を、週1回にしてみる。週次のレポートを月次にしてみる。一気にゼロにせず、まず頻度を下げて様子を見ます。誰からも問い合わせや指摘がなければ、その頻度で十分だったということです。
簡素化する 内容を簡略化してみる。10項目のレポートを3項目にしてみる、長い議事録を要点だけにしてみる。簡素化しても困ることがなければ、その情報量で十分だったと分かります。
いったん止めてみる 1ヶ月だけ、その作業を止めてみる。困ったことが起きれば再開すればいい、起きなければそのままやめればいい。「お試しでやめる」という発想は、リスクをぐっと下げてくれます。
「やめる」を1回の大きな決断ではなく、小さく試して様子を見るプロセスにすると、ぐっと取り組みやすくなります。
やめてから、自動化を考える
ここまでの話で伝えたいのは、効率化の順番です。
- ステップ1:そもそもやめられる作業を見つけてやめる
- ステップ2:頻度を減らしたり簡素化したりする
- ステップ3:残った作業を、自動化や効率化する
多くの人がいきなりステップ3から始めようとしますが、実はステップ1・2のほうが、はるかに大きな効果があります。やらなくていい作業を頑張って自動化しても、得られる時間は限られています。一方、やめてしまえば、その作業の時間まるごとがなくなります。
「効率化の前に整理」とよく言われるのは、こういうことです。何を残し、何をやめるかを先に決めてから、残したものをどう楽にするかを考える。この順番が、いちばん大きな効果を生みます。
まとめ
業務効率化というと自動化ばかりに目が行きがちですが、もっと効くのは「そもそもやめる」発想です。続けてきた作業の中には、「誰のため」「やめたら何が困る」「いつから・なぜ」の3つの問いで見直すと、やめていいものが見えてきます。
急にやめるのが怖ければ、頻度を減らす・簡素化する・いったん止めてみる、と段階的に進めればいい。やめてから残ったものを自動化する、という順番が、効率化のいちばん大きな効果を生みます。
「自分の業務だと何をやめていいか判断がつかない」と感じたら、お気軽に相談してもらえればと思います。日々の作業を一緒に見直して、整理するところからお手伝いできます。